──わかりきったことを………!
決まっている。その答えなど、どんな言葉を用いたところで意味することは、ただ一つ。
なのにそれを、宮田の口から聞きたいと、一歩は言っているのだ。
──そんなこと、言えるかッッ!
そう、強く思う。
だが、同時に──本当に、我慢も限界なのだ。
手首を鎖で拘束された状態では、片手ずつの動作ができない。かといって、手錠の掛けられた両手を、一歩の首後ろから外そうものなら、自分の体を僅かでも支えることができなくなってしまう。それはつまり、一歩に己の体の全てを明け渡すということと同じだ。さらに、全体重が掛かることにもなる──『一歩』を飲み込んでいる、箇所に。
今巡らしている思考すら、全身が溶けそうなこの快感の前に、宮田の頭から消えてしまいそうなのだ。
穿たれた内壁が、熱い。殆ど動かないで存在を主張する、その大きく張りつめたモノをもっと奥に感じたくて、宮田は四肢が痙攣するたびにそれを締めつけては腰をくねらせた。
無意識の、反応だ。
…疼いている──より強い刺激を求めて。
そして、先端から体液を滴らせて濡れそぼっている宮田自身に、一歩は指一本すら触れない。今日は、ただの一度も。
頬が熱く火照る。乱れた呼吸には喘ぎも混じり、すすり泣きに近かった。
──もう………ダメだ。
宮田は、凍りついていた声帯を、ようやく震わせた。
「…あ………も、っと………っ…」
「もっと…? 何、宮田くん………?」
顔を覗き込まれた拍子に腰を押しつけられ、繋がりが深くなる。予想できなかったその動きに、宮田は自分の濡れた声を、遠くで聞いた気がした。
だが、声がどうのとは、宮田はもう考えなかった。最早、そんなことはどうでもよくなっていた。
──早く、どうにかしてほしい。
それだけだった。
自分だけではどうにもできなくて、今与えられている刺激では満足できない。下肢は言うことを聞いてはくれず、既に一歩の思うまま。
焦れったくてどうしようもなくて、手錠で自由にならない両手の爪をギリ、と一歩の背に立てた。快楽から逃れられはしない──それは承知しているのに、それでも体の中で荒れ狂う快感を抑えようと、宮田は気怠げにかぶりを振った。
ちゃんと宮田がねだるまで、これ以上のことをするつもりが一歩にはない。宮田はわかっていて、それでも限界まで抗ってみたのだが、やはり無駄のようだ。
もう、言うしかなかった──恥も外聞もプライドも、なげうって。
──今の生殺し状態から免れるのなら、何でもする。
そんなことすら、宮田は思った。
「………も…、うごけっ…バカ野郎………っっ」
この状況に置いてもあくまで強気な宮田の物言いが、あまりに宮田らしくて、一歩は思わず微笑んだ。
眉間に僅かに皺を寄せて、迫りくる快感の波に飲まれまいとする宮田の紅潮した顔は、それはそれは艶かしいものだったが、これ以上は辛いだけだろう。
正直、一歩も限界に近かった。
埋めたそれをゆっくりと抜く。そうして全てを抜きさり、繋がりを完全に解いてから、一歩は先端をあてがい。
一息に、貫いた。
──その瞬間から、密やかな喘ぎは、隠すことのない甘い鳴き声に、変わった。
.....続く
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