手錠-4- 

1999.11.26〜12.18.up

 一歩は、深く埋めたものをさして抜きもせずに、繋げた体のさらに奥を抉るように、腰を押しつけたまま殊更ゆっくりと揺さぶった。
 本当に、揺さぶるだけの………動き。

「…ぅ、………っ…」

 密着した腰が、揺れる。火傷を負いそうなくらい熱くて、圧倒的な大きさのモノが、自分の体の中で鼓動とともに脈打っているのが、はっきりわかる──
 そう錯覚するほどに、その動きはひどく緩慢で、だから宮田は、痛みを感じることはなかった。
 "加減できなくなる" と言った割に、一歩は思いっきり加減していた。
 最も、そんな無茶を今まで宮田がされたことは、一度もない。だからその点では、宮田も安心していた。…これなら、明日に響かないだろう、と。
 ──だが、いかんせん、加減にも程がある。
 そう、宮田は思った。
 今の刺激だけでは、宮田にとってある意味ツライ。逆に、我を忘れることもできないのだから。
 …確実に、少しずつ高ぶっていく自分を、まざまざと晒され、見せつけられる。激しい快感も、痛みも、感じない。その代わりに与えられるのは、これ以上はないというくらいの、甘ったるい…悦楽。
 徐々に、体の感覚が、快楽に染まっていく。
 速まる鼓動、乱れる息──そのくせ、いつまで経っても変わらない、微々たる刺激。
 たまらなくなって、宮田はかぶりを振った。
 声は殺しやすかった。だが、その緩やかな快感も、考えようなのだ。
 己の体が高ぶれば高ぶるほど、それだけでは足りなくなってくる。足りなくて、一歩の僅かな動きから生まれる快楽の全てを、追ってしまう。
 それでも全然足りなくて──耐えきれなかった宮田の腰が、もどかしげに揺れた。

「…宮田くん…まだ、痛い…?」

 唇を噛み、目を閉じてその奔流に飲まれないように努力していた宮田は、見当外れなその問いに思わず目を開いて一歩を睨んだ。
 ──ズレているにも、程があるだろう!
 目が合った途端、一歩はうっすらと微笑んだ。

「それとも…今のままじゃ、足りない………?」

 宮田の視線の先にあったのは。
 あくまでも、雄の、強い瞳だった。
 宮田は、目線を絡ませ睨みつけたまま、そういうことか、と思った。
 一歩は、宮田が堪えられなくなるまでこの状態を続けるつもりなのだ。宮田が、音を上げるまで。
 もう──限界に近いとわかっていて、そんな言葉を投げつけるのだ、この男は。
 ねめつける宮田にお構いなく、一歩は噛みしめた宮田の唇を舌で潤してから、そっと口づけた。
 歯列を舌でつつかれて宮田がゆっくり開けると、口腔内にそろりと侵入してくる。動こうとしない怠惰な舌を強引に起こされ、ねぶられる。
 誘うような動きに煽られて、宮田も少しずつ反応を返していく。
 柔らかくてなま暖かい濡れた感触に、不意に、ゾクッと宮田の体が総毛立った。
 途端、自分の体に突き刺さったままのモノを締めつけることとなり、またも背筋に震えが走る。
 ──ダメだ。
 いったん火がつけば、もうとめられなかった。
 貫かれた箇所に刺激が欲しくて、きつく締めつけながら、宮田は腰を揺らした。…それでも、無理な体勢のせいで、思うように自分の体は動かないし、一歩も全くと言っていいくらいに動こうとしない。
 幾度も角度を変えて、舌を絡ませ、放しては口腔内を侵し合う──深い口づけも、背中や脇腹を優しく撫で上げるだけの手のひらも、そのままに。
 だからこそ。
 余計に、焦れったさが募る。
 もっと欲しいのだ──優しくなくていいから、もっと激しさが、欲しい。
 唇が離れたと同時に、宮田の口の端から唾液がツ、と伝い落ちた。
 
「宮田くん………」

 一歩は、囁きを宮田の耳に直接落とした。耳たぶを唇で挟んで、舌でペロリと舐め。
 途端に震えて硬直する宮田に、もう一度囁いた。

「…どうしてほしい………?」



.....続く     

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